アオバ33年の軌跡と忘却力

「アオバマガジン特別号」制作に際し、
「33年の軌跡」の部分を主に担当しました。

そこで気づいたのですが、
人の記憶というものはあまり当てにならないということです。

主な製品が発売された年度や、メイン製品のパッケージ変更については、
記録が残っていますので、正確にお伝えしています。

けれど、製品として取り上げたものの、早ければ1~2年、
長いもので数年取り扱って、結局製品群から外れたものが複数あり、
そういう製品についての開発経緯や特徴などについての記憶が定かではなく、
お伝えする気持ちも起きないのです。

その頃のお客様対応の責任者として、
発売した製品は必ず社員販売で購入して使っていました。
トルマリン繊維を使ったお布団や高級毛布、靴下などは自宅に残っています。

とても気に入って、今でも使っている味来食器シリーズなどは別として、
アオバの製品リストから外れた製品は
都合よく頭の中からも整理されてしまっています。

人に関する記憶も同じです。

アオバはスタートから7年で
年商63億円(末端の上代換算100億円)の売り上げを計上し、
社員数は関連会社含め130人くらいに膨れ上がっていました。

それ以降も採用面接を担当しましたので、
全員を知っている筈なのに、
どうしても顔と名前が一致せず、どこのポジションにいたのか
思い出せない人が複数名います。

若いころには、人の顔や名前を覚えることが得意だったはずなのに。

もちろん60歳代になってしまってからは、
そもそも人様のお名前や顔を覚えることが不得意になってしまい、
半面忘れる能力が身につきました。

自分にとって都合の良い記憶は大事に残すが、
都合の悪いものは消し去ってしまう傾向が
人間にはあるようです。

家族のように大切に思い接していた人と、会社の分割に至るような出来事により
分断されてしまった悲しい歴史が、
アオバにもあります。

この世で起きることは、すべて必要・必然・ベストであるとしたら、
そういうことすら、必要があって起きていることとなります。

心に刺さって痛い、忘れたくても忘れられない出来事も、
そのことを受け入れ学んで、相手に感謝できたら、
記憶が書き換わっていくのかもしれませんね。

逆にそこで学ぶことができないと、
いつまでもつらい傷として残ってしまうのかも。

アオバマガジンの33年の軌跡に不都合な歴史が載っていないね、
と言った人がいましたが、
担当した私の記憶にとどまっていることは、
楽しかったことが圧倒的に多かったのです。

老人力によって、
つらい記憶を消し去っていく忘却力を身に付けたのかもしれません。

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